途中でヤメるな

「やっぱり言うのヤメとくわ」

このセリフを聞いた瞬間に僕はピーンときましたね。ああ、コイツは僕に惚れてるんだなと。


これは僕が中学生だった時のお話。

ある日の放課後、部活を終えて教室で1人帰りの支度をしていると、同じ部活の女子部の三浦さんが教室に入ってきて僕に声をかけてきました。

「男子も今終わり〜?」

僕と三浦さんは小学校が一緒だった事もあり、それなりに仲の良い間柄だったのです。「ああ、さっき終わって帰るとこ。疲れたよ」僕はそう答えました。そしてそれから他愛もない世間話を三浦さんとしていたんです。今思えばこの時から三浦さんの様子はいつもと違ってるような感じでした。

しばらく会話をしていると、突然三浦さんが「ねぇY。あ、あのさぁ…」と言って黙ってしまいました。そして僕が「何?」と聞くと、「やっぱり言うのヤメとくわ」と言って再び黙ってしまったのです。

ここで冒頭のヨミですよ。このシチュエーション、間違いなく三浦さんは僕にホモの字、違った、ホの字じゃないですか。僕に好きだと言いたいんだけど、やっぱり恥ずかしいから言うのヤメよう、そんなセンチメンタルジャーニーな状態じゃないですか。

まぁ僕には松口さんっていう好きな子がいてですね、その事は何故か同級生のほとんどが知ってまして、何故かっていうか自分で松口さんが好きだって言いふらしてたからなんですけど、とにかく松口さんの事はこの際忘れてですね、三浦さんの告白をガップリ四つで受け止めようと思ったんです。さぁカムヒア!

そう思った僕は三浦さんに「何だよ。言いかけて途中でヤメんなよ。気になるじゃん」と言いました。いや気になるも何も全部分かってるんですけどね。ほら、好きって言わせたいじゃん。わー、Y君てばやーらしぃー。

すると三浦さんは「そう?じゃあ言うけど…」と前置きしてこう続けたのです。






「松口さん彼氏出来たんだって」

うん、何そのいらない情報。ていうかお前俺の事が好きなんちゃうんかと。俺に告白しにきたんちゃうんかと。ほんとスカートめくるぞ。

そして動揺した僕が「あっ…そうなんだ…。じゃあ三浦さん俺と付き合う?」と言うと、三浦さんは「うーん」としばらく考えた後「やっぱりヤメとくわ。じゃあね」と言い残して教室から立ち去っていきました。教室の窓から見える夕焼け空はどこまでもオレンジだった。



言葉には不思議な力があると言われ、それは一般に「言霊」と呼ばれています。言葉にしたら願いが叶ったとか、言葉に出した瞬間に何かが起きたとか、それらは言霊の力と考える人も少なくありません。

僕も昨夜「はー。オナニーでもすっかなー」と言葉にしてからオナニーしたら、言霊の力なのか発射地点が予定と大幅にズレてしまい、これじゃ言霊じゃなくて






やっぱり言うのヤメとくわ。